相手の意図や気配を読む“観の目”には聴覚認識が欠かせませんが、この点を自覚している人は案外少ないのが実情です。そういった人たちは耳を塞いで組手をすれば想像以上にやりにくく音によって相手を捉える事の重要性が理解できることでしょう。
“観の目”を会得するには聴覚を研ぎ澄ますことが肝要ですが、その方法は幾つかあります。耳栓を装着しての組手も、そのうちの一つです。
耳を塞ぐと却って音を聞こうとして聴覚への意識が高まり、その反対に視覚へ対する意識の割合が減少するので、宮本武蔵が言う所の「見の目弱く、観の目強く」或いは植芝盛平翁の教えである「相手の動きを見るな、相手の技を見るな、相手を見るな」を体感できる、効果的な稽古法といえるでしょう。
その他の聴覚鍛錬法ならびに柳川式“観の目”養成法の詳細については『武道的感性の高め方』(BABジャパン)を参照して下さい。《参考》
兵法の目付といふ事
眼の付けやうは、大きに広く付くる目也。観見二つの事、観の目つよく、見の目よわく、遠き所を近く見、ちかき所を遠く見ること、兵法の専也。敵の太刀をしり、聊かも敵の太刀を見ずといふ事、兵法の大事也。工夫有るべし。此眼付、ちいさき兵法にも、大きなる兵法にも同じ事也。目の玉うごかずして、両わきを見ること肝要也。かやうのこと、いそがしき時、俄にわきまへがたし。此書付を覚へ、常住此眼付になりて、何事にも眼付のかはらざる所、能々吟味あるべきもの也。
『五輪書 水之巻』より引用
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